音楽

Koopman:Six Little Preludes

収録時間の関係で「おまけ」で入っている曲のほうが印象に残ってしまうというCDがまれにあります。このCDも本来であれば「インベンションとシンフォニア」のほうがメインのはずですが...私が注目したのは最後に収録されていた「小プレリュード集」のほうでした。

この曲集をこんなふうに熱くダイナミックに弾き切る奏者がかつていたでしょうか...初心者向けの練習曲としての領域をはるかに超え、聴き応えのある作品に仕上がっています。

華麗なるオープニングの1番、ちょっとセンチメンタルな2番、待ってましたとばかりに駆けだしていく3番、特に6番などはほとんど暴走しているといった趣です。この危なっかしさが魅力なんですね。

個人的な意見をいわせてもらえば、「インベンションとシンフォニア」は面白く聴かせるのがむずかしい曲集とおもえます。Koopmanはいろいろと工夫して弾いているようですが...わかりやすい曲想をもつ「小プレリュード」の収録の際、ついに開放された気分となりエネルギーが爆発したのではないかと推測します。生き生きとした表情、歌心、スケール感。このような演奏を聴いてしまうと、この曲集をもはや「小」プレリュードと呼ぶことは不可能となってしまいます。


残念ながら...このCDも廃盤のようです。興味のある方はこちらからどうぞ。


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Staier:Sonate f-moll K 69

前の記事で触れたAndreas StaierによるDomenico Scarlatti集。このCDを初めて聴いたとき、ちょっとびっくりしました。実にアグレッシブというのか...ギラギラとした演奏に聴こえるのですね。あれっ"Scarlatti"ってこんな音楽だったっけ。このCDを聴くときは気力体力を充分に整えてからのほうがよさそうです。聴き終わるとへとへとに疲れてしまいます。最後の"K 427"のアクロバティックな速弾きには目が覚めることうけあい。

でも...よくよく聴いてみると、単にバリバリと弾きすすんでいるだけではないことに気がつきます。短調の曲についてはとりわけ細やかな息づかいが感じられます。収録曲のなかで個人的に好きなのは"K 116""K 246"など。特に"K 247"では「憂い」、"K 69"では「翳り」が味わい深く表現されているように感じました。

ココで全曲の試聴が可能です。


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Staier:Sonata in D minor BWV 964

J.S.Bachの無伴奏バイオリンソナタ2番"BWV 1003"のチェンバロ用編曲です。Staierは速めのテンポで生き生きとリズミカルに弾いています。あまりにハマっているので、チェンバロバージョンのほうがオリジナルなのではないかと一瞬錯覚してしまうほどです。このなかではなんといってもFugaが聴きもの。こちらは特に速く、Szeryng盤(バイオリン:1967年収録)が8分05秒のところ、なんと5分51秒となっています。それにしてもよく指が回るひとではあります。

このアルバム、Bachによる(とおもわれる)チェンバロ用編曲ばかりをおさめたものですが、はっきりいってこの曲以外はあまりおもしろくありません。収録時間がトータル76分33秒と他のアルバムと比較し長くなっているのもそれをおぎないお徳感を演出するためであったのかもしれません。

そのためなのか...すでに入手困難(廃盤?)となっているようですが、こちらでは入手可能のようです。個人的にはこの"BWV 964"を聴くだけでも購入する価値があるとおもっています。私もこの曲だけをリピートして聴くのが常なので...


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高橋アキ:Incarnation Ⅱ

ここに「現代日本ピアノ音楽の諸相」と題されたオムニバスアルバムがあります。林光、間宮芳生、一柳慧など現代音楽界を代表する作曲家の作品が収録されています。もともと夭折の寡作家である甲斐説宗氏の作品を聴いてみたい(ほとんど音源がないもので...)というのが動機で購入したのですが、残念ながらその作品は私にはピンときませんでした。あと、いろんな意味で超メジャーな坂本龍一氏の作品もありますが...やはりポピュラー音楽で才能を発揮する方とおもわれます。

ところで...やはりこのアルバムの白眉は、佐藤聡明氏作曲の「インカーネイションⅡ」でしょう。多重録音と生ピアノの分厚い音のカーテンに包み込まれていく感覚。「モアレ効果」という音のズレを利用しているのだそうです。高橋アキ氏の演奏も鬼気迫るもの。演奏時間が18分にも及ぶこのアルバムでも最も長大な曲なのですが、リピートモードでずっと聴いていたくなる魔力があります。作曲者もそれを意図しているのではと思われる節も。まさに「輪廻」というわけです。何というか...トリップする感覚とでもいうのでしょうか。なぜかPink Floydをおもいだしました。プログレがお好きな方はけっこうはまるのではないでしょうか。

※amazonにはこのCDの試聴ソースはないようです。HMViconにはありますが、Macの場合はTiger以降では聴けない*ようですので、代わりにこちらこちらをあげておきます。興味のある方はどうぞ。


追記:
*その後、試聴ソフトが"jmd試聴Player"に変更され、Flash Player 8.0.22以降がインストールされていれば問題なく動作するようになったようです。(08.4.19)


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Smith:Partita Al Liuto, BWV 997

Hopkinson Smith氏によるBach のリュート曲集。現在は2枚組で発売されていますが、当初はLPで1枚ずつリリースされました。2枚目が発売されるのが待ち遠しかった記憶があります。あとでCDで買い直しましたが、なんとなくLPのほうが音質が良いような気も...。ギターによるCDは多くリリースされているようですが、Smith氏の演奏を聴くと、なるほどリュートのための曲だったのだなとあらためて納得させられるものがあります。じんわりと心に滲み込むような味わいのある懐の深い音色。特に2枚目に収録されているBWV 997のFugaは絶品。後にこのCDで再発されたようです。


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Savijoki:Saxophone Concerto in E flat major

これもかなり前に手にいれたもの。Saxophone Concerto集と銘打たれ、3曲が収録されています。あまりにもマイナーなアルバムですが、CDプレーヤを入手したばかりの頃で、いろいろ買ってみたい衝動にかられたのですね。

最初の曲はLarssonというスウェーデンの作曲家の手になるもの。両端楽章はつまらないのですが、中間楽章のAdagioは美しく歌われます。いずれの楽章においてもサクソフォンではふだん使われないであろう高音が出てくるのですが、これがどうにも不安定な音で...聴いているこっちの方が落ち着かなくなってくるほど。Savijoki氏は名手なのでしょうが...これが20年前の技術的限界であったのかもしれません。3曲目はこのCDのオーケストラを振っているフィンランドの指揮者Panula氏の小品。もともとはビオラとピアノのための作品だったそうです。やはりこの曲集でのベストは2曲目と思われます。比較的メジャーなロシアの作曲家Glazunovの作品。ジャージィな雰囲気がそこはかとなく漂う佳品です。残念なのは、曲のヤマ場で録音上の問題なのか微かなノイズが入ってしまっていることですが....。

サクソフォンの苦みのある音色というのは独特な魅力があります。ときおり無性に聴いてみたくなるCDのひとつではあります。

※試聴はココがおすすめ。

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Nicola Hall:Dance from 'La vida breve'

男性的で力強く正確な演奏。女性とは思えません。きっと気の強い方なのでしょう。しかし、バリバリ弾けているだけで面白味はないともいえます。最初はおおっと思うのですが、聴いているうちに途中で飽きてしまうのです。こういう人がデビューできていたというのは、クラシックギターの演奏技術が他の楽器のそれと比べて進歩の途上にあるからとおもわれます。最初の曲を聴いたときにうなってしまったのは運指の確かさに対してだったことにあらためて気づきます。個人的には2曲目、ファリャの「はかなき人生」がお気に入りでした。

最近ふと思い立ち、その後を調べてみると...どうも現在は指の事故のため引退しているようです。普通ならここで残念とかいうステレオタイプな物言いをすべきなのでしょうが...おそらくそのまま事故なく演奏活動を続けていたとしても同じだったとおもわれます。むしろ途中で引退したことで伝説となったことを喜ぶべきでしょう。

私は、デビュー盤で買いましたが、その後の2枚目とあわせ、このCDで再発されたようです。しかし、こちらも現在は入手困難であり、視聴ソースもないようです。その意味では...この演奏は大変貴重なものといえそうです。


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クラシックギターのCDの解説って...

レコ芸3月号が発売されましたね。実は気にしていたことがありました。それは以前の記事でとりあげた益田正洋氏の新譜のレビュー。さっそく読んでみると...最初のレビューは「推薦」としていますが、やはり歯切れの悪さを感じます。あくまで推測ですが、私は、今回のCDの企画はレギュラーのレビュアーであるこの浜田滋郎氏の肝入りでなされたものと考えていました。それだけにこのCDが今回どのように解説されているのか...興味津々だったわけです。残念ながら期待していた出来でなかったため、このような文章となったのでしょう。おまけに後半は自分の書いた当該CDの解説をそのまま(多少の省略はありますが)載せています。これってどうなの?と思いませんか?公平なレビューじゃないですよね?こういう場合は別の人が批評すべきでしょう。原稿料もディスカウントしてほしいところです。そもそも、クラシックギターのCDの解説ってこの人ばかりじゃないですか。他の人はいないのですかね。新人を起用したらいかがでしょう。業界のしがらみでもあるのでしょうか...日本のギター業界にとっては「良い方」なので誰も批判しないのでしょうね...多分本当に「ギターを愛する良い人」なのだろうと思います。そのせいなのかもしれません。批判するより仲良くしたほうがよいと業界の方々は考えているのでしょう。ところで...もうひとりの浜田氏は「準」としていました。これが妥当な評価というべきでしょう。

確かに益田氏がこれまでにリリースした作品群は、常に新しい世界を切り開いてきたものばかりといっても過言ではないでしょう。現行のものでいえば、異なる世代の20世紀の作曲家の作品を意欲的に組み合わせた2枚目。あまり演奏されなかった楽曲に新たな光を当てた3枚目。そして単なる上級者の練習曲としてしかとらえられてこなかった作品に生命を吹きこんだ4枚目。いずれの試みも大きな成功を収めたといえるでしょう。

しかし...今回のCD、曲の冒頭から、これまでと違うなと感じていました。爪が弦を弾くときのノイズが気になったのです。ちょっと指先が震えている。ふつうならそれほど気にならないポジション移動の際の擦弦音もそうです。テンポも微妙に揺れているような。どうも不安定な印象がぬぐえないのです。この重苦しい雰囲気は何なのでしょう。これって同じ人?別人が弾いているようです。ベストコンディションをキープしていたのでしょうか。やはり次作に期待です。


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Hamelin:Eight Concert Etudes op 40 No 3

前の記事で吉松隆氏の音楽をクラシック、ジャズ、ロックいずれでもない音楽といいましたが、この流れでくれば...当然、このCDをとりあげないわけにはいきません。

以前の記事で、私はJazzが苦手と発言しました。その理由の1つに、即興についていけないということがあります。"Modern Jazz"などでは、原曲を自由自在にアレンジし、演奏していくわけですが、曲中のある時点からわからなくなります。それは、Jazz村の住人の閉じた世界へ入っていくようなものに感じられます。おそらく...その世界に入り込める人のための音楽なのでしょう。それが悪いというつもりはありませんが。

反対に、このKapustin氏の音楽は、Jazzのテイストを持ちながらもわかりやすく、いずれのジャンルの聴き手にも開かれた音楽のように思います。そのなかでもお気に入りなのは、"Toccatina"です。猛烈なスピードで駆け抜ける爽快感は格別です。特に後半の軽やかに飛翔していくような感覚は他の曲ではなかなか味わえません。

残念ながら、このCDに試聴ソースはありませんが、こんな演奏を見つけました。Hamelin氏の整った演奏よりもインパクトがあるかも。


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田部京子:東に向かう舞曲

吉松隆氏作曲のピアノ小品集「プレイアデス舞曲集」。少し湿度を感じさせる情緒はまぎれもなく日本の作曲家のものです。これを日本女性が弾いているのですから...どうも照れてしまうというか...聴いているところを見られたくないというか、ちょっと気恥ずかしさもありつつ、ひとりでひっそりと聴きたくなる曲集ではあります。

吉松氏は以前の記事でとりあげたこのCDの日本盤の解説を書いていた現代音楽らしからぬ現代音楽を書く作曲家。クラシック、ジャズ、ロックいずれでもない音楽。そういう意味では、この曲集の演奏者としては、Keith Jarrett氏は実に適任といえそうです。個人的には東に向かう舞曲がお気に入りなのですが、これはぜひ彼の演奏で聴いてみたいと思っています。欧米人の男性が弾くとまた違った味わいがありそうという意味でも...。

ココでほぼ全曲の試聴が可能です。

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The English Concert:Concerto for harpsichord

以前の記事でTrevor Pinnockの独奏作品に触れましたが、彼は"The English Concert"という古楽アンサンブルを結成し、バロック音楽を中心に多くの録音をおこなっています。そのなかでも、私の一番のお気に入りはJ.S.Bachの「チェンバロ協奏曲第1番」(現在はこのCDに収録)。各奏者の一体感もさることながら、きびきびとしたリズムが心地よいさわやかな演奏です。メカニカルでデジタルな感覚もあり、約30年も前に録音された演奏とはとても思えません。特に終楽章における彼のチェンバロソロの部分は圧巻。「ヴィルトゥオーゾ」と呼ぶにふさわしい名演です。

※試聴はココでできます。

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Vladimir Mikulka:Romance

このCDも、その昔、「世界初録音」とのうたい文句に惹かれ、LP時代に購入したもの。

表題作はピンとこなかったのですが、むしろB面収録の曲の方が印象に残りました。A面に収録されていた表題作のNikita Koshkin氏作曲の"The Prince's Toys"は、テクニックでそそられる方のための曲ではないかと思われます。ギタリスト(および関係者)受けはするかもしれませんが、一般の方が感心するかというと疑問の残るところ。反対にB面のStepan Rak氏の曲は、いずれもメロディを大切にした親しみやすい曲想です。"Temptation Of The Renaissance"はいにしえの響きが味わい深い佳品。"Farewell Finland"は、フィンランドの民謡をもとに作曲された大作。 個人的には"Romance"がお気に入りです。いわゆる「禁じられた遊び」のパロディ。最初聴いたとき、思わずニヤリとさせられたものです。とかく通俗化しがちな名曲を下敷きに全く新しい世界を作り出しています。なかなか遊び心のある方とお見受けしました。

※試聴はココがおすすめ。


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Keith Jarrett:24 Preludes And Fugues op.87

このCDもだいぶ前に手に入れたもの。愛聴盤ではあったのですが、たまには聴きくらべもしてみようと、先日、他のCDとともにScherbakov盤を買いました。

このScherbakov盤のほうがいわゆるクラシックでいう標準的な演奏なのかもしれませんが、Jarrett盤の流麗で洗練された演奏を聴いたあとでは...何とも垢抜けない印象が残ります。Jarrett氏は、Jazz Musicianとのことですが、私はそのジャンルが苦手でほとんど聴いたことがありませんし、これがShostakovichの意図した演奏であるのかもわかりません。しかし、彼の静謐な叙情をたたえた無国籍ともいえる演奏の方が、むしろ現代人の皮膚感覚にマッチしているような気がしてなりません。というか...この曲集自体が、単純なジャンル分けを超えてしまっていると考え直すべきなのかも...。また、この演奏の凄いところは、以前とりあげたPapandreouのCDと同様、じっくりと聴くこともできれば、BGM的な聴き方もできることです。この曲集は20世紀の現代音楽というよりも21世紀の現代「人によりそう」音楽というべきなのでしょう。

※Jarrett氏の試聴ソースはココがおすすめ。


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益田正洋:Hommage To Segovia

5枚目のCDがリリースされることを彼のwebサイトで知りました。発売日が迫り、Fontecのサイトで試聴ソースがアップされました。そのとき感じたことは、インパクト不足かなということでした。すこし躊躇はしましたが...とりあえず買ってみることにしました。

このCDに関し、感じたことは大きく分けて2点ほどありました。まず1点目、なんとなく全体的に沈んだ雰囲気があるように思いました。私はよく彼のブログをチェックすることがあるのですが、脱力系というか...とぼけた味があってけっこうなごみます。演奏家なのに音楽ネタがほとんどなく、毎日食事の話とそのスナップばかり。まあ、それはいいのですが...気になるのは体調の話です。よく風邪をひいたりするようです。過去にはコンサートのキャンセルもあったようです。今回は収録時のコンディションがすこし悪かったのではないかということです。2点目は、このプログラムをあえて彼が弾く必然性があったのかということです。彼はギター界の革新者としての役割をあたえられたひとだとおもうのです。何より従来と同じことをするのを好まないタイプとみています。肩に力を入れずともすうっと新しいことを自然にできてしまう実力を備えています。本来の彼であれば定番のレパートリーを弾くときでも何か新鮮なアイディアを盛り込むはずです。残念ながら...今回のCDは過去の大演奏家のプログラムをそのまま弾いているように聴こえました。収録時間約73分という大変お徳用なCDではありますが、四半世紀前と今とは時代が違います。聴き通すのは個人的に正直つらいものがありました。一曲ずつ聴くぶんにはいいのですが...

最初にホマドリームのサイトでスケルツィーノを試聴したときは、はっとする美しさを感じたものですが...彼にはもっと豊かなアイディアがあるはず。それを生かすような作品をつくりつづけて欲しいのです。他の演奏家であればこんな感想を述べることはなかったでしょう。これまでの出来があまりにも良かったために...思わずきついことを書いてしまったようです。大変失礼しました。次作も必ず購入しますのでよろしくお願いします。

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Cathy Berberian:Sequenzas 3

演奏の巧拙というのは古典音楽やポピュラー音楽のような調性音楽の場合はある程度わかります。新しく聴く曲でも、今まで聴いてきた曲からの類推が働くためでしょう。しかし、それがいわゆる現代音楽であればどうでしょうか。我々素人にはなおさらわかりにくいものとなります。いわゆる何でもありの世界であり、音が外れているとか、テンポがずれているとかいう判断も安易にはできません。専門家ならいざ知らず、素人がへたに批評などすれば、嘲笑される恐れもあります。しかし、我々のような素人でもわかる瞬間があります。それはいままでの演奏より優れた演奏、あるいはそうでもない演奏に接したときです。

以前、Luciano BerioのLP"Circles; Sequenzas 1, 3 & 5"(現在はこのCD)を買ったことがあります。※試聴はココがおすすめ。その動機は"Sequenza"という風変わりな独奏曲のシリーズをちょっと味見したいという気持ちからでした。最近、Naxosから全曲集が出ていることを知りました。廉価盤でもあり思い切って購入することに。我ながら物好きです。※試聴はココがおすすめ。
第1番のフルート、2番のハープまではふうんこんなものかと聴いてきましたが、3番のソプラノときて、アレっと思いました。歌い手が必死に曲についていこうと努力していることがなんとなくわかったのです。この人、技術だけで手一杯なのでは...と感じたのです。どうしても気になり、最初に購入したLPを久しぶりにかけてみました。いきなり冒頭から響く低くドスの効いた声、戦慄が走るとはこのことでしょう。多彩でドラマチックな表現は聴き手を飽きさせません。演劇を学んだというCathy Berberianはその素養を充分に生かしきっていました。格の違いを見せつけられたというか...。

このLP、買った当時はそれほどのものとは思わなかったのですが、第1番のAurele Nicoletの気品に満ちたふくよかな音色、第5番のVinko Globokarのユーモアに満ちた表現も今聴き直してみると実に魅力的です。新しいCDを買って、昔のLPの良さに気づく...実に貴重な体験をしたしだいです。

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Julian Bream:etudes for guitar

Villa-Lobosの音楽は、大胆でスケールも大きいが、その反面大雑把で、俗っぽいところがあります。そんなところが前衛性と大衆性を併せ持つBreamの個性に重なるようにおもいます。私がこのCDに収録されている12 の練習曲を初めて聴いたのは、LPの時代でした。※試聴はココがおすすめ。

他のアーティストはまじめに演奏し過ぎているとさえ思えることもあります。例えばKraft、温厚な音楽の先生のごとく端正に弾かれ、安心して聴けるが、反面面白味に欠ける。Yepesもまじめを絵にかいたようでいわゆるヘタウマというのか、リズム感なくつっかえひっかえで迫力不足。(余談ですが...この人の演奏を聴くたびRobert Frippを思い出します。Yepes+超絶技巧+攻撃性+思想性=Fripp? お二人ともリズム感がないのが共通点。それを逆手に取り、Yepes:独特なスペイン風味、Fripp:不気味な迫力に生かしています)山下和仁も超絶技巧できまじめに弾いていますが遊び心がないような。確かにBreamの演奏は技術的には細かなキズはあるかもしれません。しかし、野性的で色彩感やインスピレーションにあふれ、ときに危なっかしさも感じさせるところは実に魅力的です。現時点においても...もっともVilla-Lobos的な演奏といえるでしょう。

そのLP盤には、ブラジル民謡組曲も収録されていました。はっきりいって、こちらは歌謡曲的。非常にわかりやすい音楽です。最後のショリーニョは入っていませんが、その原因はLPの収録時間の関係か、曲のつまらなさか、いずれかでしょう。私は後者とみていますが。Breamは若い頃、生計の足しに盛り場でギターを弾いていたそうですが、何か1曲弾き終わるごとに酔客が演奏に拍手喝采するという情景が目にうかぶ感じです。これはまだCD化されていないようですが、機会があれば是非とも聴いていただきたいとおもいます。別な曲ですがこんな映像もありましたね。

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渡辺範彦:Valse Criollo

いきなり余談ですが、Lauroの曲を初めて聴いたのは、鎌田慶昭氏のCD。残念ながらこのCD以前の記事で触れたデビュー盤の演奏と比較し、別人のように生気を失っており、大変落胆したのをおぼえています。その後、彼が電車の中で倒れ、現在もリハビリ生活を余儀なくされていることを考慮するならば、このころ、すでに体調に変化が兆していたということなのかもしれません。(本人もレコーディングの際、内心忸怩たるものがあったものと推測します)そのため、収録されていたこの作曲家についてもほとんど印象に残っていなかったのです。

さて、ここからが本題。渡辺範彦氏については「伝説のギタリスト」ということで名前だけは知っていましたが、実際に演奏を聴いたことはありませんでした。ある日、現代ギター社のサイトを訪れたとき、過去の録音がCDでリリースされたことを知りました。おまけに曲の一部も試聴可能とのこと。さっそくアイコンをクリックしたところ、たちまち魅了されてしまいました(うーむ...我ながらあきれるほどベタな表現!)。

現在2枚のCDが入手可能です。ひとつはライブ、これは某大学でのリサイタルを同大ギターサークルの関係者がオープンリールでまるごと録音したもの。これをそのまま編集ナシでCD化したそうです。サークル室で保管されていたため、テープがワカメ化したものか、多少の音揺れが。まあ、専門家が聞けば別なのでしょうが、演奏自体はほとんどノーミスで完璧のようにおもえます。恐るべき力量といわざるを得ません。もうひとつはスタジオ録音の再発です。収録されている曲目は後のアーティストもとりあげており、いまでは多少のスタイルの古さを感じさせはします。個人的には、冒頭とりあげたLauroのValse Criolloがお気に入り。もともと、ちょっとセンチメンタルで古風なメロディであるためか、かえっていい雰囲気を醸し出しています。実に艶のある深々とした音色。渡辺氏も格別の愛着を込めて弾いているのがよくわかります。

※さて、この曲については本人の試聴ソースがないので、代わりにAdam Holzman氏のソース(16曲目がそれです)をリンクしておきます。このCDもおすすめです。

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Ralph Kirkpatrick:Partita No.2 in c, BWV 826

Bachのパルティータは、当時LPで出ていたバッハ大全集のKirkpatrickの演奏で最初に聴き、かっこいい曲があるものだと感じました。その後の演奏家が使用するようになったいわゆる「ピリオド楽器」と比較すると、ここで使用されているチェンバロは音がキンキンしている感じで多少気になるかもしれません。細かいことをいえば、いろいろあるのでしょうが...気迫に満ちた演奏がそんな不満を吹き飛ばしてくれるでしょう。この曲集はピアノでも録音が多く出ていますが、演奏者の個人的な解釈が入りすぎているような演奏が多く違和感を禁じ得ません。余計な解釈を排し、求道者のごとく、エネルギッシュにざくざくと弾きすすめる彼の演奏は、今改めて聴くと、実に新鮮で魅力的。急速楽章でのスピード感やリズム感も爽快です。私は第2番のCapriccioがお気に入りです。※試聴はココでどうぞ。


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Ton Koopman: Trio Sonatas

Koopmanの凄いところは、超絶技巧を駆使し、チェンバロやオルガンを自由自在に引きこなし、Bach等のバロック音楽をあたかもポピュラーミュージックのように聴かせてしまうことにあると思います。その特質が最も出ているCDのひとつがBach: Trio Sonatas。この曲集は宗教曲のような堅苦しさがなく大変親しみやすいメロディをもっています。

個人的には2番のAllegro。焦燥感を含んだちょっと切ない旋律が魅力です。
※試聴はココでできます。


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Ton Koopman:Toccata und Fuge BWV 538 "dorisch"

KoopmanのこのCDがでたとき、まず驚いたのが有名な「トッカータとフーガ」のトッカータ冒頭部分でした。「こんな弾き方ってありかよ」と思わず突っ込んでしまったのは私だけではないでしょう。※ココで聴けます。

でも、このCDでの一番のお気に入りは「ニ短調」の方ではなく、「ドーリア調」のほうのトッカータとフーガの「フーガ」の部分。※ココで聴けます。これもトッカータのほうはすっ飛ばし、何度も聴いたものです。しばらく、邪道な聴き方なのかと悩んでいたところ、あとでBachのフーガの中でも最も優れた作品のひとつに数えられるという解説を読み、安心したことがありました。トッカータの方は曲の形式を整えるための単なる前置きみたいなものなのでしょう。

ともすれば、あっさり弾きすぎているのではという誤解もあたえかねない演奏ですが、きびきびとしたテンポで弾きすすまれ、各声部のメロディラインがきっちりと聴こえてきます。明快な音を出すオルガンも手伝って、曲自体の面白さがしっかり引き出されています。まさにKoopmanのような「名手」しかできない優れた演奏といえるのではないでしょうか。

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Yefim Bronfman: Piano Sonatas Nos. 1, 4 & 6

Prokofievのソナタは、グロテスク、ユーモア、リズム感と三拍子揃ったところが個人的な好みにあってか、よく聴いています。Bronfmanは、このProkofievのピアノソナタ集を3枚出していますが、1枚目はまだ音が若く、3枚目はちょっと表現に迷いもあるような..(たとえば、"Nos.3"Gavrilovのほうがドライブ感があっていいとか。※試聴はココで可能)

私のお気に入りは2枚目の"Piano Sonatas Nos. 1, 4 & 6"。このなかではなんといっても"Nos.6"が聴きものですが、"Nos.4"の第2楽章の神秘感、"Nos.1"の素直でロマンチックな楽想にも魅力を感じるところです。

※試聴はココでどうぞ。

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Elena Papandreou:El Decameron Negro

霊感あふれる演奏。空間の広がりを感じさせる自然な響き。無駄な自己主張がなく、環境音楽的な聴き方も可能です。このような演奏こそまさにBrouwerが意図したものと思えます。

現在NaxosはBrouwerのguitar全集をVol.3まで出していますが、このBrouwer: Guitar Music,Vol.2が断然おすすめです。PapandreouのCDのなかでも出色の出来といえるのではないでしょうか。

※試聴はココでどうぞ。

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Trevor Pinnock:Chromatische Fantasie und Fuge

最近、ふと聴きたくなった演奏がありました。それは、Trevor Pinnockの弾くJ.S.BachのChromatische Fantasie und Fuge。

彼はこの曲を2回録音しているようですが、私のお気に入りは古い方。当時アナログ盤で入手、カセットに録音し何回もFugeの部分だけ聴いたものです。ちょっと粘っこい独特なリズムが妙に心地よかったのです。

その後、いい音で聴きたいと、CDで買い直したのですが...もともとの録音が悪いのがわかってしまい、ちょっとガッカリしたのを思い出しました。
でも、今聴いてもけっこう新鮮に感じますよ。

※試聴はココ(Fantasieの冒頭だけですが...)でできます。amazonの日本サイトでも入手できるようですが、ずいぶん高いですね。

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Gianluca Cascioli:Incises Pour Piano

これは、Pierre Boulez氏の曲です。こんな小品をなんで知ったかというと、むかしCDを買ったことがあるからです。
※試聴はココがおすすめ。

現代音楽ということになるのでしょうけど、Gianluca Cascioli氏はおもしろく聴かせてくれます。

このCDは彼の1997年のデビュー盤で、Beethoven以外はすべて現代ものという意欲作。(現在入手困難)

同CDでは、Ligetiの"Etudes Pour Piano"からも2曲を抜粋して弾いていますが、これもイイ。Cascioli氏には全曲録音をと切に望むものです。現在、全曲録音しているのはFredrik Ullén氏ですが、個人的にはどうにもゴツゴツした演奏と感じてすっきりしません。
※試聴はココでできます。参考まで。


追伸:すいません。Pierre-Laurent Aimard氏も全曲録音してましたね。でも...やっぱりCascioli氏のほうがいいです。
※試聴はココがおすすめ。


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鎌田慶昭:リブラ・ソナチネ

以前の記事でyoutubeのNikita Boldyrevの演奏について触れましたが...
具体的には以下のリンクとなります。

Felicidade
コメントにもあるように、皮肉なことに改めて村治奏一氏は凄いと思わせる演奏。

Libra Sonatine
どうにもぎこちない演奏です。疲れているのかな。

ここで思い出すのは鎌田慶昭氏の鮮やかな演奏です。
※試聴はココがおすすめ。(amazon.co.jpでは曲のリンクがおかしくなっています)

現在は病を得て活動中止を余儀なくされているとのこと。本当に残念です。


追伸:
amazon.co.jpでもLibra Sonatine[from US]が入手可能なことに気がつきました。この記事へのアクセスが多いようなので、念のためご紹介しておきます。(2008.2.3)


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Nikita Boldyrev:Recuerdos de la Alhambra

いわずとしれた「アランブラ宮殿の思い出」。
ある若手ギタリストによる佳演です。

聴き方:下記のリンクをクリックし、
画面中央の"http://fandangos.narod.ru/rec/nb_alhambra.mp3"を再クリック
(Safari+QuickTimeの場合はそのまま聴けますが、だめな場合はダウンロードしてから聴きましょう)

Recuerdos de la Alhambra

トレモロが独特な粘り気を感じさせます。
実にこってりとした味わいです。
それは、彼がロシアの出身だからかもしれません。
バラライカのような音色というか、
「ボルシチ風」とでも申しましょうか...

もともと、南国スペインの音楽なのに
大雪の日に聴いていても違和感がありません。
お国柄があらわれた演奏といえましょう。

ご注意:このほかの彼の演奏は、youtubeにもいくつかUPされていますが...
首を傾げるものばかりで、個人的にはあまりおすすめできないのが残念です。

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益田正洋:36Caprice Op.20

HMVのサイト「私のオススメ : クラシック」にわたしの文章がUPされてます。

36のカプリス、他 益田正洋(g)

よかったら読んでみてください。


追記:
HMVのサイトがかなり重いこと、他の方の記事が加わったがHTML中にアンカーが見当たらず当該文章の位置にジャンプするリンクが張れないこと、半角括弧がぬけていて最後のほうが意味不明となっていることなどから、「原文」と「投稿時の画面ショット(pdf)」を掲載しておきます。


原文:

最近の私のオススメCD!
36Caprice Op.20

私が、このカプリース集をはじめてまとまったかたちできいたのはシュタイドル演奏のCD。レコード店の棚を物色中、偶然みつけたのだ。ブリームが、とあるインタビューで「ギターの練習曲としては有益だが、つまらない曲」と語っていたのを思い出し、興味半分、廉価盤(NAXOS)も手伝ってのことだった。結果は...なかなかバラエティに富んでいるが、あくまで「珍味」。「主食」にはなりえないとおもわれた。とりあえず、ときどき気分転換にかけるCDという位置づけとはなったが... その後しばらくして、FONTECのサイトを訪れたとき、益田正洋というギタリストがエッセイを書いていた。すると、くだんのカプリースのCDをリリースしたという。あのレーベルが発売するのであるから、つまらないアーチストであるはずはないと、おもいきって購入してみると...うーんとうなるしかない。流麗に生き生きと鳴っているではないか。シュタイドル氏には申し訳ないが...まるで別の曲集のようだ。 以前にも、同様な体験をしたことがあった。キーシンがひいたリストの超絶技巧練習曲である。個人的には、リストにはテクニックを強調した無骨な音楽というイメージをもっていたし、この曲集にも超絶技巧という言葉がついていたせいか、やはりテクニックを強調した演奏がおおかったようにおもえたのだ。ところがキーシンの演奏は、そのテクニックを忘れさせるような芳醇な音楽だった。 この益田氏のCDにも「超絶技巧」よりも「音楽」を聴かせる演奏がギッシリ詰まっている。 あえて苦言を呈すれば、最後のパガニーニはなくともよかったのである。36のカプリースだけで充分CDとして完結していたのだから。認知度の低い作曲家であることを考慮したオマケのつもりだったのだろうが、かえって興がそがれてしまった。 録音のよさも魅力だ。ちなみにこのCD、SACDという高音質フォーマット(FONTECのこのアーティストにかける意気込みが知れよう)だそうだが、残念ながら私のCDプレーヤは対応していない。しかし、ハイブリッドなので一般のプレーヤで問題なく再生できる。(ちなみに私のプレーヤは20年前のもの...)

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村治奏一:A Felicidade

これイイ!!
実にダイナミックな演奏です。

A Felicidade

(NHKのトップランナーからの映像のようです)

この演奏が気に入り、CDも買いましたが...
やっぱり、ライブで燃えるタイプの人なのかも。


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