渡辺範彦:Valse Criollo
いきなり余談ですが、Lauroの曲を初めて聴いたのは、鎌田慶昭氏のCD。残念ながらこのCD、以前の記事で触れたデビュー盤の演奏と比較し、別人のように生気を失っており、大変落胆したのをおぼえています。その後、彼が電車の中で倒れ、現在もリハビリ生活を余儀なくされていることを考慮するならば、このころ、すでに体調に変化が兆していたということなのかもしれません。(本人もレコーディングの際、内心忸怩たるものがあったものと推測します)そのため、収録されていたこの作曲家についてもほとんど印象に残っていなかったのです。
さて、ここからが本題。渡辺範彦氏については「伝説のギタリスト」ということで名前だけは知っていましたが、実際に演奏を聴いたことはありませんでした。ある日、現代ギター社のサイトを訪れたとき、過去の録音がCDでリリースされたことを知りました。おまけに曲の一部も試聴可能とのこと。さっそくアイコンをクリックしたところ、たちまち魅了されてしまいました(うーむ...我ながらあきれるほどベタな表現!)。
現在2枚のCDが入手可能です。ひとつはライブ、これは某大学でのリサイタルを同大ギターサークルの関係者がオープンリールでまるごと録音したもの。これをそのまま編集ナシでCD化したそうです。サークル室で保管されていたため、テープがワカメ化したものか、多少の音揺れが。まあ、専門家が聞けば別なのでしょうが、演奏自体はほとんどノーミスで完璧のようにおもえます。恐るべき力量といわざるを得ません。もうひとつはスタジオ録音の再発です。収録されている曲目は後のアーティストもとりあげており、いまでは多少のスタイルの古さを感じさせはします。個人的には、冒頭とりあげたLauroのValse Criolloがお気に入り。もともと、ちょっとセンチメンタルで古風なメロディであるためか、かえっていい雰囲気を醸し出しています。実に艶のある深々とした音色。渡辺氏も格別の愛着を込めて弾いているのがよくわかります。
※さて、この曲については本人の試聴ソースがないので、代わりにAdam Holzman氏のソース(16曲目がそれです)をリンクしておきます。このCDもおすすめです。
Lauro *cl*/Guitar Works Vol.1: Holzman
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コメント
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パリコンでの本選ライブCD
4月23日にパリコンクール本選でのライブCDが発売されました。遺族のご家族のなみなみならぬ努力のたまものです。他界されて間もなく、奥様とお嬢様が、縁の地を訪ね、そしてパリコン会場にも足を運んだところ、偶然の出会いから、音源がみつかりました!是非、聞いてみてください。私は毎日聞いて、そのたびに感動しております。ジャケットや解説書もすごいです。
奥様の言葉:
2004年春、私たちは「第11回パリ国際ギター・コンクール(1969年)が行われたラジオ・フランス(旧・フランス国営放送)を訪ね、優勝を飾った範彦の録音に出会うこととなりました。その演奏を初めて聴いて心に浮かんだ言葉は、「純粋」「無垢」でした。パリの舞台でひと際輝いた22歳の演奏を残しておきたいと思い、メモリアルCD発売への夢が膨らみました。(渡邊悦子・史彦・恵美理~解説書より)
山野楽器、現代ギター、タワーレコードなどでオンライン購入できるようです。(500部限定なので、売り切れかもしれません。)
投稿: | 2010年5月 7日 (金) 18:36
>パリコンでの本選ライブCD
情報ありがとうございます。
さっそく某オンラインショップで注文しました。
売り切れてなければよいのですが....
投稿: kt01mk | 2010年5月 8日 (土) 00:29