Cathy Berberian:Sequenzas 3
演奏の巧拙というのは古典音楽やポピュラー音楽のような調性音楽の場合はある程度わかります。新しく聴く曲でも、今まで聴いてきた曲からの類推が働くためでしょう。しかし、それがいわゆる現代音楽であればどうでしょうか。我々素人にはなおさらわかりにくいものとなります。いわゆる何でもありの世界であり、音が外れているとか、テンポがずれているとかいう判断も安易にはできません。専門家ならいざ知らず、素人がへたに批評などすれば、嘲笑される恐れもあります。しかし、我々のような素人でもわかる瞬間があります。それはいままでの演奏より優れた演奏、あるいはそうでもない演奏に接したときです。
以前、Luciano BerioのLP"Circles; Sequenzas 1, 3 & 5"(現在はこのCD)を買ったことがあります。※試聴はココがおすすめ。その動機は"Sequenza"という風変わりな独奏曲のシリーズをちょっと味見したいという気持ちからでした。最近、Naxosから全曲集が出ていることを知りました。廉価盤でもあり思い切って購入することに。我ながら物好きです。※試聴はココがおすすめ。
第1番のフルート、2番のハープまではふうんこんなものかと聴いてきましたが、3番のソプラノときて、アレっと思いました。歌い手が必死に曲についていこうと努力していることがなんとなくわかったのです。この人、技術だけで手一杯なのでは...と感じたのです。どうしても気になり、最初に購入したLPを久しぶりにかけてみました。いきなり冒頭から響く低くドスの効いた声、戦慄が走るとはこのことでしょう。多彩でドラマチックな表現は聴き手を飽きさせません。演劇を学んだというCathy Berberianはその素養を充分に生かしきっていました。格の違いを見せつけられたというか...。
このLP、買った当時はそれほどのものとは思わなかったのですが、第1番のAurele Nicoletの気品に満ちたふくよかな音色、第5番のVinko Globokarのユーモアに満ちた表現も今聴き直してみると実に魅力的です。新しいCDを買って、昔のLPの良さに気づく...実に貴重な体験をしたしだいです。
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